Lancia by Ferrari.
1987年、このシックなセダンのボディになんとフェラーリ製のV8を積んだテーマが発表された。クルマ好きの間では、「ランチア・フェラーリ」と呼ばれるクルマがこのとき誕生したのだ。さて、そのランチア・フェラーリだが、このとき突然生まれた関係ではなく、グランプリ史上、数奇な運命を辿ったランチアのD-50というグランプリ・カーにまでさかのぼる。1955年、ランチアのエース・ドライバーである「アルベルト・アスカリ」が、フェラーリの試運転をしていたときに、モンツァでスピンをして悲劇の死を遂げたのである。その後、ジャンニ・ランチアはランチア社の財政的困窮を救わんとして、アスカリがドライブすることになっていた臨戦態のD-50を、そっくりそのままフェラーリに譲り渡したというストーリーのクルマなのだ。この、V8エンジンを持つグランプリ・カーは、その年、ファンジオ、コリンズ、そしてカステロッティ、ムッソらのドライバー達の手によって、見事にフェラーリにワールド・チャンピオンの栄冠を与えたのである。という風に、ランチアとフェラーリの運命的・悲劇的なつながりは、現代のランチア・テーマ8.32というクルマによって、再び歴史の紐が解かれることとなったのである。


Ferrari 308 QV用180°クランクのエンジンをデチューンし、90°クランクに改められた8.32のエンジンは308よりも低速トルク型とし、215馬力を発生する。(後期型は200馬力)


外観のシックさとは裏腹に、インテリアはちょっと艶っぽい。どこを見ても、革、革、木、革である。この質のよい革シートやステアリング、ダッシュボードはイタリアの最高級家具メーカー"Portolona Frau"社の製造である。自動車の椅子を家具屋に作らせるなんて、イタリアならではの贅沢極まる発想だ。


高速走行の安定を得るためには、右側のステアリングコラムを一捻り。トランクリッドからリアスポイラーが飛び出してくる。後ろから煽ってくる品のない輩をおどかす効果もある。